記憶の中に・・・

フロントガラスを叩く雨音は次第に強くなり、
車を揺さぶるほど強く吹きつける風にぼくらは不安を隠せずにはいられなかった・・・
土曜の朝に辿り着いた本流に吹く風はぼくらの戦意を失わせるほどに強く、そして激しいものだった。
雨足は幾分弱まったようだが、車の外に出ると息をすることさえできないほどの風が
容赦なく吹きつけていた。
「どうしましょうか・・・」
誰かがそんな言葉を発する。
きっとみんな心の中では、「この状況では難しいかな・・・」という思いが少なからずあったと思う。
それでも、ここまで来たからという思いが僕らを川に向かわせたのだった・・・
空は薄暗く厚い雲に覆われ、川は昨夜からの雨の影響なのか少し濁りが入っているようだった。
僕らが選択した場所はちょうど風裏になっておりその影響は少ない。
雨鱒の定番とされるチャートリュースのフライ・・・
まずは最初の出逢いを信じてこの日のために巻いたフライを結んでみた。

そんなに時間はかからなかったと思う。
久し振りの雨鱒の躍動感についついうれしさがこみ上げてくる。
リールの逆転音が周囲に響き渡り、大きな雨鱒が水面で身をくねらせていた・・・

周りの友人たちも次々とその出逢いを果している。

優しい鱒の歓迎にいつしか雲の切れ間からは青い空が顔をのぞかせ、激しい風は春の訪れを感じさせる心地よい風に移り変わっていった土曜日・・・

日曜日の空はこのうえなく気持ちいいものだった。
空の青と雪の白が織り成すコントラストは釣り人の誰もを魅了する。
キャストしたラインは綺麗なループを描きながら遠くへと飛んでいく・・・

みんな実戦で鍛え上げられた腕前は会うたびに進歩し、見ているだけで刺激的な時間を僕に与えてくれた。
本流の賑わいに鱒は少しとまどっていたかもしれないけれど、僕らの記憶に十分に刻みこまれるほどの素敵な思い出がまた一つ増えたような気がした日曜日・・・

釣りにもいろいろな種類があるけれど、その垣根をこえた素晴らしい出逢いに感謝しながら、旅の記憶を書き記している月曜日・・・

また一つあたたかいものが積み上げられた素敵な旅でした・・・。
by akiranspey | 2009-03-16 23:22 | アメマス

