Dreams dreams!!
photograph by Mr. ABU
トラウトの動きが次第にあわただしくなる夏の始まり・・・
車がまばらに行き交う地図の上に存在する道から地図上では存在しない道へと車を走らせる。
緑の木々で覆われた、そして木漏れ日が木の葉の間から溢れる名もなき道・・・
木々の息吹が良い香りを醸し出し、鳥の囀りが心地良いリズムを刻む・・・
本流から次第に遠ざかるその道はどこまで続いているのだろうか・・・
窓を空けると本流の水音がさわやかな風に運ばれて僕の耳に届く。
車から本流はまだそんなに遠くない・・・
道路脇に見つけた駐車スペースに車を止め、水音のするほうへ歩き出す。
背丈ほどに生い茂った藪を掻き分け、額にうっすら汗を滲ませながらトラウトの棲む流れへと突き進んでいく。
帰り道がわからなくならないように木々の枝にしるしを残す。帰り道を見失う経験を僕は何度もしているから・・・
そして、とうとう僕の目の前に目指していた本流が姿を現した。
左岸にたどり着いた僕・・・
川に立ち込むと、まだ夏の訪れに気づいていない川は、その冷たさを足もとに伝える。
膝まで立ち込むだけで、その強い流れは僕の体を押し流そうとする。
強くそして重い流れ、ときには荒々しく白泡をはじき出している瀬が交互に繰り返される。
水面の変化はところどころに大岩が点在していることを僕に知らせる。
昨年はなかったであろう大木が本流の強さには勝ち目がないことを連想させるように横たわっている。
やや右岸に流心を持つその流れ・・・
対岸付近は水の色をエメラルドのごとき輝きに変えて、明らかに深く、そして僕らには手の届かないトラウトの遡上ルートであることをうかがわせる。対岸は人の侵入を阻む。
その距離約65ヤード・・・
僕のキャスティングの腕ではその魅惑的なエメラルドの流れにフライを送りこむことはできない。その流れにフライを送り届けることのできるスペイキャスターがいるかどうか・・・
それでも僕はその流れに精一杯のキャスティングで勝負に挑みたいんだ。
素晴らしいトラウトに出会えなくてもそれはそれでよい・・・
本流でロッドを振り続けていたい、ただそれだけ・・・
いつの日かそんな夢を見たんだ・・・。
by akiranspey | 2007-07-22 22:45 | 北海道