出会いの瞬間・・・

朝靄のかかる本流に足を踏み入れたのは東の空から太陽が顔を臨かせてすぐのころだったろうか・・・
秋の色を濃くした木々はすっかり夏色を失い、間もなくやってくるであろう冬の到来を感じさせるには十分だった。
このところの寒さで川の水もぐっと冷たさを増し、いよいよ僕等が追い求める魚も動き出すころだろうかと勝手に想像していた・・・

北の本流に幻の魚を追い求めて・・・
11月、北の大地にはちらほらと冬の便りが届き始めていた。

北からの風は頬を冷たく通り過ぎるけれど、本流の流れはせわしい日々を送る僕等を癒すには十分魅力的だった。
遠くから時折聞こえる電車が線路を叩く音と、流れを遮る僕に押し寄せる水の音以外は何も聞こえない柔らかな世界・・・

広い本流の対岸に少しでも近づけるように僕らはキャストを始めた。
長いランを釣り下っていく・・・
広大な流れの中で、川底の変化をとらえることはできないけれど、不意に訪れるかもしれないその一瞬をみんな信じていた・・・
そんな中、友人のロッドが綺麗な弧を描く。
慎重なやりとりで手中におさめたのは綺麗な白い斑点を身にまとったアメマス。
緊張が少し和らいだ瞬間だった。
そしてまた一人、早い流れのその先で小さいながらも本命の魚を釣り上げた。
みんなに自然と笑顔がこぼれていた・・・

青く澄んだ北の空がとても近く感じられる。
足早に雲は流れるけれど、時間だけはゆっくり進んでくれることを願っていた。
僕には出逢いの瞬間がなかなか訪れない・・・

本命の魚を追い求めて僕らはいろんな場所を彷徨った。
頭上を通り過ぎた太陽はいつの間にか西のほうへとその傾きを変えていく。

夏の陽の長さに反してすぐそこまで来ている冬の始まりであるこの季節の昼間は短い。
時間がない・・・
僕がこの日最後に選んだのは、対岸を射程距離にとらえることのできる左岸のランだった。
マドラーゾンカーからロングテールへとフライを交換してみた。
それでもなかなかドラマは訪れない。
みんなが流し終えたあと、僕はもう一度上流から釣り下る・・・

魚がいることを信じて・・
僕のフライを見つけてくれることを信じて・・・
ややダウン気味にキャストをして流れをゆっくりと横切らせる。
この流速であればなんとか魚が見つけてくれればフライを追うことはできるはず・・・
そしてその出会いは不意に訪れた。
スイングが終わってリトリーブに入ろうとした瞬間、ロッドがググッと引き込まれた。
根がかりかと思わせたそのラインの先に生命反応が感じられる・・・
間違いなく魚だ!!
流れに乗った魚の引きは強烈なものだった。
ラインをある程度巻き取ると、魚はまたリールの逆転音を響かせて僕から離れようとする。
いつも以上に慎重なやりとりを試みるも、魚はなかなか姿をあらわさない。
底を這うような動きと力強いそのパワー・・・
本命の魚であることを願っていた。
西に傾きかけた陽の光が眩しく感じられる。友人たちがそのやりとりを見守ってくれている。
数分のやりとりの末、やっと水面に顔をだしてくれた魚は間違いなく僕らが追い求めている魚だった・・・
ギラッとその魚体が陽の光で輝いていたんだ・・・

うれしさがこみ上げてくる瞬間。
少し体の力が抜けた気がした。
ここまでやってきたからには魚に会いたいというはりつめていた気持ちが解き放たれた。

時を同じくして下流にいた友人のロッドも弧を描いていた。
遠くから頬が和らいでいる友人の顔がはっきり見えた。

みんなで駆け寄りお互いを祝福する。
素敵な時間をみんなで過ごすことができたんだ・・・。

北の果てに流れる川も年々その姿を変えつつある。
またいつの日かこの地を訪れるときに、美しき魚に出逢えることを願っている。
メインタックル
ロッド:TSR DSP16f 12番
リール:ハーディーゴールデンプリンス9/10
ライン:ガイドラインインターボディ10/11+Tip15fタイプ8
リーダー:0X12f
フライ:マドラーゾンカー、ロングテール
North River Photograph





by akiranspey | 2008-11-03 11:15 | イトウ

